へくせん・けっせる
「はいっ、終ー了ー!」
「「はやっ!?」」
茜が言った通り、これで準備は終わりだった。
とゆーか、私と美紗しか動いてない。
まぁ、動いた内に入らない程度だったが。
「あとは、千春さんたちと忍さん待っとくしかないなー」
そう言う茜に合わせて、とりあえず私たちも敷き物の上に座る。
「暇だ~」
「暇やな~」
私と茜が声を揃えてそう言って、寝転がった。
特に打ち合わせはしていなかったが、行動が一致してしまった。
「あははっ……まぁ、確かに暇だけど。ゆっくりと桜でも見てましょうよ」
私たちを見て、美紗はそう笑って桜の樹を見上げた。
それに合わせて、私たちも寝転がったまま、桜の樹を眺めた。
優しい春風に吹かれて、桜の枝がザァッと揺れる。
その度に、ヒラヒラと薄紅色の花びらが舞い落ちてくる。
なんだか、春なんだなって改めて実感してしまう。
「ふぁっ」
突然、鼻先にひんやりした物が触れた。
何かと思ったら、ひとひらの桜の花びらだった。
「おー、ラッキーやなぁ」
「それってラッキーなの? まぁ、わかる気がするけどね」
私を見て、茜と美紗は楽しそうにしていた。
「くすぐったいー」
くしゃみが出そうな感触が鼻先をくすぐる。
堪らず、花びらを手で摘まんで持ち上げた。
「あー、取っちゃった。写メしたかったのになぁ」
「あははっ、そりゃええなぁ。ほら七穂、もっぺん乗せてみーや」
横向きに寝そべり直して、茜が携帯電話を取り出して見せた。
「嫌だよ。くすぐったいもん」
私は上半身を起こして、手に乗せた薄紅色の花びらを見た。
「春だねぇ……」
「そやなー」
「そうねー」
宴会が始まるまでの時間。
私たちは、桜の樹を見ながら、のんびり時を過ごしていた。
二年前から変わらない。
桜の樹の下での、お花見が始まるまで。
春を楽しもう。