へくせん・けっせる
第二話:話題が生まれるまで
友達の訪問
四月五日。
今日は同じ大学の友達が来る。
昨日の内に掃除を済ませてしまったので、私は座ってコーヒーを飲んでいた。
現在時間は十時半ちょい前。
そろそろ来る頃だ。
とくにもてなす用意はしていない。
お互いに気の知れた仲だから、遠慮なく普段通りで接せるのだ。
なんだか改めて言葉に直して感じると、こそばゆい。
いま私、きっと顔がニヤけてる……。
――ピンポーン。
そんなことを考えている内に、玄関のチャイムが鳴った。
「はぁーい」
どうやら来たらしい。
ドアを開けるとそこにはやはり中瀬美紗【なかせ みさ】がいた。
「はよー、遊びに来たよー」
「いらっしゃーい、さぁ、上がって上がって」
お邪魔しまーす、と言いながら美紗は靴を脱いで部屋に上がった。
「いやー、相変わらず殺風景な部屋だね」
部屋の様子をぐるりと見回して、美紗は笑った。
「いつもいつも失礼ねー、あんたは。べつに良いでしょー? 私はシンプルな感じが好きなの」
殺風景とかシンプルとか言うが、カーテンは青いしラックも水色だ。
十分カラフルな気がするんだけど……。
「いや、カラフルとかそういうこともだけどさ。とりあえず物が少ないってことよ」
「それこそ十分じゃなーい。これ以上何か増やすと狭くなるし、増やす必要なんて無いでしょう?」
この部屋は押入れを含めて八畳なのだ。
これ以上家具が増えると、きっと住みづらくなる。
「んー……ま、それもそうか。それに、七穂らしいしね」
「美紗ー、それってどういう意味なのかなー?」
それからも、あはははっ、と楽しく笑いながら時を過ごしていく。
ふと、思ったが。
この部屋で美紗は目立つ。
さっきの美紗の言葉を認めるわけじゃないけど……やはり色のバリエーションが少ないこの部屋では、ピンクの春らしい可愛いカーディガンの美紗は目立った。
美紗は外を出歩いて来ているわけだから、きちんと化粧もしていた。
少し濃いめのピンクのルージュが美紗にとても似合っていた。