へくせん・けっせる
それに比べると、私は貧相な感じだ。
いつも部屋では動き安いし無難だからワイシャツとジーンズという格好だ。
そこらへんに行くだけなら、これで大丈夫だ。
そして現在もその格好だ。
それは気を使わなくて良い関係だからだ。
私たちは親友と言って申し分無い関係だ。
なんせ幼稚園からの友達だからだ。
私は、化粧もしていない。
私は、着飾ってもいない。
だけど、美紗は違う。
なんだろう……少しだけ、寂しくなった。
「――んでさー、あのバカ優仁【ゆうと】がさー」
「あははっ、有り得ないってー!」
それもきっと、気のせいだろう。
私が勝手にお互いの距離感をおかしくしてしまっただけだ。
そう、笑っているのだから。
幼稚園で、小学校で、中学校で、高校で……大学、そして現在。
離れたり縮まったりで、結局いつも同じ距離で私たちは笑いながら話をしている。
「…………」
ふいに沈黙。
それもまた、良い。
話題が途切れても、また生まれるから。
次の話が生まれるまで。
甘くしたコーヒーを味わおう。
誰もがの、人生のようなコーヒーの苦さと甘さを。
ゆったりと飲み干そう。