へくせん・けっせる
第三話:ブランコに飽きるまで

お隣りさん

四月十日。

今日の予定はとくに無し。

だから、ただ部屋の中でボーッとしている。

掃除もせずに、テレビも点けずに、音楽も聞かずに、コーヒーも飲まずに、本も読まずに。

ただベッドの上に横たわり、何もせずに暇を暇で埋める。

「暇……」

どうしよう暇で暇で……暇だ。

――ピンポーン。

「ん? 誰か来た?」

いきなり美紗が遊びに来たかな……いや、宅急便とか? でも「どうも~、宅急便で~す!」って感じの無駄に陽気な声は聞こえないしなー……。

――ピンポーン。

あ、色々考えてたら忘れてた。

「はーい」

ベッドから起き上がり、部屋のドアを開ける。

「おー、やっぱいた! こんちゃー七姉【しちねえ】!」

「おー、こんにちは秋奈っち」

ドアを開けると、ショートカットの小さな女の子が立っていた。

お隣りの奥山秋奈【おくやま あきな】ちゃんだ。

ちなみに、私たちは秋奈っちと七姉と呼び合うくらい仲が良い。

私の主観では、妹というより、友達と言った関係だと思っている。

「んで、どうしたの今日は?」

現在は午後二時くらい。

秋奈っちの通う小学校は土曜日だから休みだ。

「七姉暇だろうから、一緒に公園で遊んであげようと思ってさ」

「うわーい、お心遣いありがとうございまーす……」

まったく、こっちが付き合ってあげるってのに……。

まぁ、暇だから良いか。

「よぅし。じゃあ行くか!」

「おー!」

二人で手を上に突き上げ笑い合ってから、私は財布と鍵だけを持って公園に向かった。

春の陽が暖かく、ふわりと吹く風が頬に優しい。
外で遊ぶのに最適な午後だった。

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