へくせん・けっせる

イチゴパフェ


そこからは、二人して講義をまじめに聞いていた。

だが、次第に退屈になり、私は暇潰しに自分の服装を見直してみた。

紺色のタートルネックのシャツに黄色いカーディガンを纏い、ブラウンのロングスカートをはいていた。

多分、変では無いと思う。

まだ暇なので、茜の服装も見てみる。

黒地にオレンジのラインが走ったパーカーと白いパンツを着ている。

ボーイッシュにまとまっていて、まさに茜っぽい服装だと思う。

「ん? どないした?」
私の視線に気付き、茜は小声で聞いてきた。

「いや、なんでもない」
同じく小声で返すと、そか、と頷いて茜はまた前を向いた。

講義が終わるまで、あと三十分くらいある。

熱心に講義する講師を完璧に無視して、ルーズリーフに落書きをする私。

時々、茜が私の絵を見て小突いてきたので、線が曲がってしまったりした。

そうして、茜にちゃんと仕返ししつつ、私は良く行く喫茶店のイチゴパフェをノートのど真ん中にデカデカと完成させた。

「…………」

中々の出来だ。

とっても美味しそうだ。

そう思いながら眺めていたら、なんだか食べたくなってきた。

「……ねえ、茜」

小声で隣りに話しかける。

「ん? なんや?」

「これ、食べに行こう」

そう言って、私はノートのイチゴパフェを指差した。

「おー、ええな。ほんなら、この講義終わったら行こか?」

「イエース」

親指を立てて、ビシッと突き出して見せると、茜が頭にチョップしてきた。

「欧米か!」

「いたっ、日本だ!」

「知っとるわ、ボケ!」

「おい、そこの二人ー。うるさいから静かになー」

いつの間にか小声じゃ無くなっていたようで、講師にやんわりと怒られてしまった。

「……すんません」
「……すみません」

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