絶対にみちゃダメ!
 飾り枠のはまった無駄に背の高い窓が延々と連なっていて、その窓から見える景色は綺麗に手を入れられたガーデンだった。

 庭といえば庭なんだけど、もっとこう横文字が似合いそうな、オシャレな雰囲気。

 青々とした芝生が広がり、低木が植わっていて、つるバラのあしらわれたアーチなんかがあったりする。

 言っておくけど、ここはホテルでもお屋敷でもなんでもなくて、ただの学校。

 さすが天下の東雲学院。

 ったく、世の中お金の余っているところは本当にあるんだ。




 それでも、窓からたっぷり入ってくる春の日差しは気持ちがいい。

 新しい生活、新しい学校。

 期待に膨らんだ胸に、自然と足取りが軽くなってきた。

「宮本さん!」

 後ろからハスキーな声がかかって、あたしは足を止めた。

 振り返ると、すらっと背の高い女の子が立っている。



 ショートボブの栗色の髪の毛に、明るい瞳。

 少し薄めの唇に、通った鼻筋、頬骨に影を差しそうなほどの長いまつげ。

 文字通り正しく『美少女』なそのコは、さっき知り合ったばかりの子だった。

「神城(かみしろ)さん」

 あたしはにっこりと顔をほころばせる。

「雅(みやび)でいいよ」

 美少女……神城雅ちゃんは、色素の薄い瞳を人懐っこそうに細めて微笑んだ。

 そうすると、彼女のちょっとシャープでクールな美貌が、柔らかい印象になる。

「じゃ、あたしも小町(こまち)で」

 そんなやり取りをして、あたしたちは並んで歩き出した。

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