絶対にみちゃダメ!
 でも、うつむいて歩くのは性に合わないから、しっかりあごを上げて雅の背中を追いかけてどんどん進んだ。

 適当に真ん中より少し後ろの席に座る。

 前に向かってどんどん傾斜していくから、眺めがよくて、気持ちいい感じがする。

「今日は昇級の挨拶だけなのよ」

 そう雅に教わる。

 どうやらこの学校、1学期の始業式なんかはないみたいだ。

 校長の話とか長くて面倒くさいから、なければ無い方がいいよね。





 そんな風に色々考えていたら、

「よー。お前が編入生の宮本小町?」

 妙に明るい男の子の声がかかった。

「そうだけど?」

 名前を呼ばれたあたしは、声の方をむいた。

「へー」

 そう言いながら、興味津々の目を向けてくる男の子。

 背が高くて、もちろん顔も整っていた。

 瞳も髪も真っ黒で短めで男っぽい雰囲気。

 そして、印象的な意志が強そうな目をしている。



 黒い制服を適当な感じで着崩している。

 この学校でこんな風に制服を着崩している人を始めて見た。

 ここは基本良家の子女しか入れないお金持ち学校で、お育ちがいいせいかみんなビシッと着ているのに。


 印象を一言で言ってしまえば『失礼そうなヤツ』だった。





「けっこー可愛いじゃん。その髪自前?」

 男は骨ばった手を伸ばして、あたしの肩より長いまっすぐな黒い髪を一房、手ですくった。

 さらりと手から零れ落ちる感触を楽しまれてしまう。
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