絶対にみちゃダメ!
「虎に取られたくないっていうんじゃなくて、やっぱり俺は小町を自分のモノにしたい。誰にも渡したくない」

 そんなのまるで愛の告白だよ。


 でもコイツがそんなこと理解しているとも思えないんだよね。

 本当に好きだと思ってくれてるなら……。



 ううん、とんでもないこんなヤツ。

 ありえないってば!




「だからモノじゃないっていってるでしょ!いい加減にしないと怒るよ」

 あたしは照れくさくなって、ゴツンとゲンコツで雅の背中を叩いた。

 負ぶわれた背中は大きくて支えてくる手は力強い。


「いてっ!叩くこと無いでしょう」

「何度言ってもわからない人にはこうするの」

 あたしはちょっとだけ笑った。

 ごまかしてるんだ、あたし。




「俺は……欲しいんだ、小町の全部が」

 夜風に溶けそうな程だったけど、真剣なつぶやき。




 ドキン、と心臓が壊れそうな音を立てた。


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