遅すぎた,I Love You【短編】
春には春の
夏には夏の
沢山の季節を繰り返し
二人の想い出を積み重ねて
私たちは少しずつオトナになっていった。
「ねぇ、悠希ちゃん。」
「ん??」
「僕達、ずっとこのままトモダチでいようね。」
「あったりまえでしょ?
ずっとずっと永遠にトモダチよ。」
優しくて、穏やかな彼に
少しワガママで自己主張の強い私
中学を卒業しても
高校は同じ普通科の高校に入学。
そして卒業後の進路は
彼は地元の国立大学の医学部を受験し
私は地元の大学の教育学部を受験する。
このまま何事もなく時間は過ぎて
オジサンになっても
おばあちゃんになっても
このまま私と彼は繋がりながら、ずっとトモダチとして仲良しでいられる。
そう信じて疑わなかった頃
「ねぇ、悠希ちゃん。」
「…え??」
「あなた…、東京の音大を受験する気はない??」
私はピアノの先生にそう声をかけられた。