死蜂
死蜂に刺された以上、最早助かる術はない。

恭平、美晴ら仲間の見ている前で、葵は激痛と苦悶に痙攣する。

最初は飛び跳ねるように激しく。

やがて痙攣は小さくなっていき、荒い呼吸と呻き声もなくなっていき。

最期は、電池が切れるように動かなくなった。

『人間』としての電池切れ。

「そんな…葵さん…」

美晴が口元を押さえ、涙をこぼす。

人を呪えば穴二つとはいえ、あまりにも無惨な結末。

目の前で親しい友人が命を落とす。

こんな悲劇はない、そう思っていた。

が…その認識は誤りだ。

悲劇はこれから始まる。

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