スイートスキャンダル
後ろ髪を引かれる思いだったけど、ホームに足を踏み出した。


ゆっくりと振り返ると、柊君は柔らかく微笑んでいた。


寂しさなんて感じていないと言わんばかりの表情に、寂しいのは自分(アタシ)だけなのだと気付かされる。


言わなきゃ……


本当は言いたくない言葉を紡ぐ為に、ゆっくりと口を開く。


「さよなら」


「はい、また」


笑顔と一緒に返って来た言葉に、どう返事をすればいいのかわからなかった。


“また”なんて、いつになるのかわからない。


もう会う可能性は無いとは言わないけど、柊君と出会ってからの約13年間で彼と会えたのは、今回で三回目。


それを考えれば、柊君と会える機会はもう無いに等しかった。


< 114 / 200 >

この作品をシェア

pagetop