スイートスキャンダル
「柊君っ……!」


何が言いたいのかわからないまま紡いだ言葉は、空気が抜けるような音を立てて閉まったドアに遮られてしまった。


ガラス越しに微苦笑を零した柊君が、何か言いたそうにしていたけど…


新幹線がゆっくりと動き出すと、彼はやっぱりあの柔らかい笑みを浮かべた。


思わず追い掛けようとして踏み出した足は、最初の一歩だけで止めてしまった。


程なくして、柊君の姿も、そして新幹線も見えなくなった。


寂しさを紛らわせるようにキュッと拳を握ると、左手で持ったままだった紙袋がクシャッと音を立てた。


そういえば、何なんだろう……


あたしはボストンバッグを置いて、柊君に貰ったその袋をそっと開けた。


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