スイートスキャンダル
中に入っていたのは、桜色のピアス。


貝殻を模したピアスには柊君の優しさが詰まっている気がして、何だか瞳の奥から熱が込み上げそうになった。


「あたしには可愛過ぎるよ……」


苦笑しながらそれを握り締めると、柔らかい笑みを浮かべた彼の表情が脳裏を過ぎった。


同時に、胸の奥がキュッと締め付けられた。


大人になったあたしに夏休みがくれたのは、どこか優しくて切なさを孕んだ時間。


その間に何度も感じた甘い感覚は、今も確かに胸の奥に残っている。


だけど…


“夏休み”は、今日で終わり。


「ありがとう……」


ピアスを見つめながら呟いたあたしは、改札口に向かってゆっくりと歩き出した――…。


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