スイートスキャンダル
数年前からずっと手抜きだったメイクを、夏休み明けからきっちりとするようになった。


それを久しぶりに会った榊原君に見抜かれて、何だか居た堪れなくなった。


「男でも出来たか?」


「そんなんじゃないわよ!」


「そんなにムキにならなくてもいいだろ。変わらないな、昔から」


「からかわないでよ」


クックッと笑う榊原君の横顔を、眉を寄せて見上げた。


「何なら誰か紹介してやろうか?」


彼は同期や同級生の前ではこんな話だってするくせに、他の社員達の前では無駄にクールだったりする。


総務部の社員達から密かに“オフィスの王様”なんて呼ばれている事を、きっと本人は知らないのだろうと思った。


< 123 / 200 >

この作品をシェア

pagetop