スイートスキャンダル
「さぁ、どうぞ」


柊君は窓側の席をあたしに譲ってくれるらしく、奥の座席に手の平を向けて促しながらニッコリと微笑んだけど、あたしはそれどころじゃない。


やられたっ……!


眉をグッと寄せて言いたい事を飲み込み、ため息をついた。


まだ三回目の対面だと言うのに、柊君と二人きりで旅行をするなんて有り得ない。


「……電話、して来るわ」


一先ず有紀に抗議をしようと小さく言い残し、電話が出来る場所まで移動した。


だけど…


「お掛けになった電話番号は、現在電波の届かない場所にあるか……」


スピーカーから聞こえて来たのは、無機質かつ薄情なアナウンスだった。


< 17 / 200 >

この作品をシェア

pagetop