スイートスキャンダル
「とにかく早く調べなさいよ」と何度も言った有紀に、柊君にはまだ話さないように口止めをしてから電話を切った。


何となく居た堪れない気持ちになりながら買った妊娠検査薬は、茶色い紙袋に包まれている。


柊君、もう帰ってるかな……


いつもなら早く会いたいと思うけど、今日だけはあたしよりも後で帰って来て欲しい。


柊君の前で検査薬を使う事になったら、どんな顔をして結果を待てばいいのかわからないから…。


小さな不安を抱き、それと同じくらいの戸惑いを消化し切れないまま帰宅すると、幸いにも彼はまだ帰って来ていなかった。


ホッとして袋から検査薬を取り出したけど、不意に心細さが芽生えて…


あたしは、その場で立ち尽くしてしまった――…。


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