スイートスキャンダル
「遥っ……!」


しばらく躊躇していたあたしは、玄関から聞こえて来た声にハッとした。


恐らく靴を脱いでいるのであろう柊君は、玄関先でいつになくガタガタと音を立てていたけど…


それを気にする余裕も無いまま、持っていた検査薬を慌ててバッグの中に隠した。


「遥っ……!」


「あ、おかえりなさい……」


転がるようにリビングに入って来た柊君は、何故か息を切らしている上にスーツが少しだけ乱れていて…


その表情は、真剣とも困惑とも取れるような色を浮かべている。


「どうしたの?そんなに慌てて……」


平静を装う前に驚かされたせいで目を見開きながら訊くと、柊君が血相を変えてあたしの両肩をガシッと掴んだ。


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