スイートスキャンダル
鍵と引き戸を開けると、浴衣姿の柊君が悪戯っぽく笑った。


「開けてくれて良かったです」


からかわれているのだとすぐに気付いたけど、浴衣姿の彼から漂う色気に飲まれてしまって、返す言葉を見付けられない。


「せっかくだし、夕飯まで観光でもしますか?」


「……あたしは留守番してるから、観光なら柊君一人でどうぞ」


柊君に見入っていた事を誤魔化す為に素っ気無く答えると、彼が眉を下げて微苦笑を漏らした。


「遥さんが行かないなら、俺も部屋にいますよ」


柔らかい口調で言った柊君の浴衣の裾から覗く足元を見て、きちんと肌のお手入れをして来て良かった、なんて事をつい思ってしまった。


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