スイートスキャンダル
柊君は楽しげにクスクスと笑うと、隣の部屋に繋がる襖を開けた。


すると、昨日来た時と変わらない景色が現れた。


昨夜は確か、綺麗な漆(ウルシ)塗りのお膳に彩り鮮やかなご馳走が並べられていたはず。


ふと脳裏を過ぎった光景から記憶を手繰り寄せて、昨夜の事を思い出そうとしてみたけど…


三本の瓶ビールと熱燗(アツカン)をほとんど一人で空けた後からの事が、全くと言ってもいい程思い出せない。


「あ、あの……」


「はい?」


柊君は小さな冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、振り返ってから首を傾げた。


あたしは嫌な予感を抱きながら、敷居の向こうにいる彼を見上げた。


< 41 / 200 >

この作品をシェア

pagetop