スイートスキャンダル
「あ、可愛い」


柊君は洗面台から顔を覗かせたあたしを見て、ニッコリと笑った。


ほんの一瞬だけ感じたときめきは、きっと恋愛関係がご無沙汰なせいで、決して彼に反応した訳じゃない。


「……そんなお世辞言っても、何も出ないわよ」


素直に喜べずにぶっきらぼうな態度を取ると、柊君がフワリと微笑んだ。


「俺はお世辞でそんな事を言う程、出来た人間じゃないですよ。大体、上司にだってお世辞なんて言いませんから」


「じゃあ、よっぽど女の扱いに慣れてるのね」


「……そんな風に見えますか?」


「そんな風にしか見えません」


淡々と返すと、微笑んだままの柊君が眉を寄せた。


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