スイートスキャンダル
「なっ……何してるのよ……?」


精一杯平静を装ったつもりだったけど、思い切り心の中の動揺が出てしまった。


「海岸に降りませんか?泳げなくても、海を満喫する方法はたくさんありますから」


「ちょっ……!」


右手を包む温もりの正体は、柊君の左手。


握られたままの手を引っ張られて、自然と足を踏み出すしか無い。


「てっ……!手、手をっ……!」


綺麗な笑みに反し、大きくて骨張った手は男らしく、そこにはしっかりと力が込められていて…


「温泉饅頭と麦茶のお礼を下さいよ」


どんなに手を引っ込めようとしても、柊君はそんなずるい事を言った後、柔らかい笑みを向けて来るだけだった。


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