スイートスキャンダル
海岸に降りる間、いくら手を引っ込めようとしても出来なかった。


それは波打ち際を歩いている時も、柊君が砂浜に落ちている貝殻を拾っている時も、同じだった。


「海からのプレゼントです」


無邪気に微笑む彼が、桜色の貝殻を差し出して来た。


「いらないわよ」


繋がれた右手を意識し過ぎて、フイッとそっぽを向いてしまう。


「この海岸で桜色の貝殻を拾うと、素敵な事が起こるそうですよ」


だけど…


「え……?」


干物女のくせにロマンティックな事に弱いあたしは、思わず“素敵な事”という言葉に惹かれて柊君を見上げてしまった。


すると、彼がとても嬉しそうに笑った。


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