スイートスキャンダル
「遥さんに幸せが舞い降りるように、プレゼントです」


差し出されたままの貝殻を、空いている左手で怖ず怖ずと受け取る。


「見付けられて良かった」


柊君が何気なく口にしたその言葉で、さっきからずっと彼が注意深く砂浜を見ていたのは、もしかしたら自分(アタシ)の為だったんじゃないかと思った。


こんな事で嬉しいなんて感じる自分(アタシ)を、心底バカみたいだと思うのに…


それを嫌だと思わないのは、どうしてなのだろう…。


「ねぇ……」


「はい?」


「バッグに入れるから、手を離して」


「じゃあ、30秒だけですよ?」


柊君は悪戯な笑みを浮かべて、ゆっくりと手を離した。


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