スイートスキャンダル
「……ご馳走様でした」


「いえ」


財布を出そうとした所を制されたのは、料亭を出てすぐの事。


店内では柊君を立てる為に何も言わなかったけど、さすがに見るからに高級そうな所でご馳走になる訳にはいかないと思って、店を出てすぐに財布を出そうとした。


それなのに、彼はさっきと同じように笑顔でそれを止めると、中々引き下がらなかったあたしを見事に言い包(クル)めてしまったのだ。


そして、あたしは半ば納得出来ない表情のまま、お礼を口にした。


「そんな顔しないで下さいよ。遥さん、さっきは『美味しかった』って笑ってたじゃないですか」


不満げな顔のあたしを見て、柊君はまた微苦笑していた。


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