スイートスキャンダル
「あっ、あたし……もうちょっとこっちで寝るから……」


気合いを入れて勢いよく振り返ったあたしは、必死に平静を装いながら布団を離した。


だけど、柊君からは何の反応も無い。


「……柊君?」


不思議に思って呼び掛けたけど、返事が無くて…


「寝ちゃったの……?」


小さく訊きながら、恐る恐る柊君の顔を覗き込んだ。


その瞬間、視界に飛び込んで来たのは、綺麗な寝顔。


スースーと寝息を立てて眠る柊君は、昔を思い出させるようなあどけない表情をしているのに…


暗闇の中の小さな光だけでも綺麗だと認識出来る寝顔に、思わず息を呑んでしまう。


ある意味、それは凶器のような威力を持っていた。


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