スイートスキャンダル
「バカね……」


呆れ混じりの苦笑を零しながらも、心はすごく温かい。


「バカって……。人が真剣に……」


「うん、ありがとう」


眉を寄せた柊君に自然と零れた笑みを向けると、彼が一瞬だけ目を見開いてから視線を逸らした。


「……柊君?」


「見ないで下さい」


柊君の顔を覗き込もうとしたあたしの視界が、大きな手に覆われてしまって…


「ちょっと、何なの?急にどうしたのよ?」


訳がわからないあたしは、眉を小さく寄せながらその手を退ける。


「不意打ちなんてずるいなぁ、もう……」


独り言のように呟いた柊君は、何故か困ったような笑みを浮かべていた。


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