スイートスキャンダル
「この近くに展望台があるみたいなんですけど、行ってみませんか?」


「え?でも……」


新幹線の時間が気になって腕時計を確認すると、柊君がフワリと微笑んだ。


「時間なら大丈夫ですよ。ここからだと歩いても10分くらいしか掛からないみたいだし、旅館の女将さんも景色が綺麗だって言ってたんで」


「じゃあ、せっかくだから行ってみる?」


疑問形で返したあたしに、柊君は心底嬉しそうに笑って頷いた。


「こっちです」


ほんの少しだけくすぐったさを感じた事には気付かない振りをして、ゆっくりと歩き出した彼に付いて足を踏み出す。


柊君は一昨日や昨日と同じように、あたしの歩幅に合わせて歩いてくれていた。


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