大嫌いなアイツ
 




「――甘いの、好きだよ。普通に」

「そっか~!良かった!」


結局梨夏は、バレンタインらしく無難にチョコレートを買ってきてくれたらしい。
俺のために選んでくれたとか、嬉しすぎて顔が緩む。


「梨夏、チョコレート嫌いだったんだな。確かに食べてるとこ、見たことないけど」

「果物とかは好きなんだけどねー。お菓子とかの甘いのって何か苦手で」

「へー珍しい」


ひょい、とチョコレートを口に運ぶ。


「うまいのにな。ほんとに食べない?」

「あ、うん。吉野が喜んでくれただけで十分!」


いひっ、と梨夏が笑う。


「…ほんと、梨夏って天才だよな」

「へ?…んっ、」


ちゅ、と梨夏の唇に触れる。


「チョコレートもいいけど…こっちの方が甘くて好き。」

「!」


俺の言葉に反応して、頬を熟したりんごのように赤く染める梨夏はめちゃくちゃかわいくて、それこそ食べたくなる。


味見どころじゃ済まないな。


 
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