大嫌いなアイツ
「ちょっ…吉野くん!?」
「――――黙れ。」
いつもより近くにある吉野の顔に、心臓がバクバクとうるさく鳴り響く。
聞こえていないか、伝わっていないかと不安になって、さらに心拍が速くなる。
「大丈夫だから、下ろし…」
「岡部!?大丈夫!?」
「先輩…っ」
バタバタと駆けつけてきてくれたのは、尊敬するミキ先輩。
心配そうな顔が見えて、少し泣きそうになった。
「―――ミキさん。すみません、フロアの方の片付けお願いしてもいいですか?」
「もちろん!早く岡部連れてって」
「で、でも、先輩!」
「こっちはやっとくから。吉野くんに介抱されてきなさい」
「え、あ」
私の言葉にならない声を無視して、吉野が歩き始めた。
「ちょ…吉野くん」
「しっかり掴まっとけ。」
「――――…」
何それ…
何で嫌いな私なんかを助けるの?
一応バイト仲間だから?
でも、ここまでする必要なくない…?