大嫌いなアイツ
*
「――――下ろすよ」
「あ、うん…ごめんね」
「…………」
吉野は無言のまま、私を見たけど、すぐに目線を反らして私の身体をゆっくり地面に下ろした。
「こんな外で悪いけど。水道ここしかないし」
「ううん、大丈夫…」
「脱いで」
「へっ!?」
ぬぬぬ脱ぐ!?
変な声を出してしまった私を、吉野は呆れたような表情で見る。
そして、足元を指差した。
「靴下。」
「っあ!靴下ねっ」
何かいたたまれなくて、吉野から目線を反らしてしまった。
変な緊張が襲ってきていて手元がおぼつかなくて、靴下がなかなか脱げない。
「――――――ていうか、何想像したんだよ?」
「―――!」
その声にはからかいが含まれているような感じがしたけど、私は吉野の顔を見ることはできなかった。
……顔が熱くなるのを感じたから。
バレないように、と出た声と言葉は、ぶっきらぼうなものだった。
「――――別に、何も」
「ふぅん…」
感じ悪い、私。
冗談くらい言えばいいのに。
吉野を前にすると、私が違う私になるみたいだ。
「…それは、残念。」