大嫌いなアイツ
 


「――――下ろすよ」

「あ、うん…ごめんね」

「…………」


吉野は無言のまま、私を見たけど、すぐに目線を反らして私の身体をゆっくり地面に下ろした。


「こんな外で悪いけど。水道ここしかないし」

「ううん、大丈夫…」

「脱いで」

「へっ!?」


ぬぬぬ脱ぐ!?


変な声を出してしまった私を、吉野は呆れたような表情で見る。
そして、足元を指差した。


「靴下。」

「っあ!靴下ねっ」


何かいたたまれなくて、吉野から目線を反らしてしまった。
変な緊張が襲ってきていて手元がおぼつかなくて、靴下がなかなか脱げない。


「――――――ていうか、何想像したんだよ?」

「―――!」


その声にはからかいが含まれているような感じがしたけど、私は吉野の顔を見ることはできなかった。


……顔が熱くなるのを感じたから。


バレないように、と出た声と言葉は、ぶっきらぼうなものだった。


「――――別に、何も」

「ふぅん…」


感じ悪い、私。
冗談くらい言えばいいのに。


吉野を前にすると、私が違う私になるみたいだ。


「…それは、残念。」

 
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