大嫌いなアイツ
水が流れるザーッという音だけが、私たちの周りに響く。
吉野は何も言わずに、ただそこにいる。
何で戻らないのかな…?
その状況が気まずくなって、私は口を開いた。
「…ね、もう大丈夫だから…、吉野くんは戻って?仕事あるでしょ?」
吉野の顔が私の方を向く。
「………あと5分。」
「へ?」
「ちょうど休憩するとこだったし」
「そ、そうなの?」
「うん」
そう頷いたきり、吉野は何もしゃべろうとしない。
何でここに留まろうとするんだろう?
私といたって面白くもなんともないはずなのに。
むしろ、私なんかと一緒にいたくないでしょ?
…吉野の心が全く見えない。