大嫌いなアイツ
 

ボーッと流れる水を眺める。


「…岡部さんってさ」

「え?」

「――――――いや、いいや。」

「?」


私は無意識に眉間に皺を寄せた。


吉野って言葉止めること多いよね。
パッと言葉が出て、考えながらしゃべるタイプなんだろうな。
頭の回転が早い証拠なのかもしれないけど、話してるこっちは続きが気になって仕方ない。


吉野がしゃがみこんだ。
私と吉野の目線が同じになる。


「…!」


…ていうか、距離近いんですけど…!


間近にある吉野の顔。
変な緊張が走って、顔が強張った。
吉野は私の顔をじっと見て、ハァと軽く息をついた。


…なに?
私の顔見て、ため息ですか?


「…俺、やっぱり戻るな。」

「へ?」

「その方がよさそうだし。…ちゃんと冷やしておけよ」

「…」


吉野がスッと立ち上がる。
私は吉野のことを見上げたけど、吉野は私の方を見ることはなかった。
そのまま、店の中に入っていってしまう。


―――――パタン。


水の流れる音は遠くに聞こえ、ドアの閉まる音がやけに響いた気がした。


吉野が何考えてるかわからない。
心配してくれてるような行動したと思ったら、私のこと見てため息つくし。
私のこと嫌そうな態度取るのに、近付いてきたり…


その行動の意味は何なの?
何を考えてるの?


…ただそれだけが気になった。

 
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