大嫌いなアイツ
2
――――…
「――――…べさん。岡部さん?」
「えっ?」
声の方に顔を向けると、すぐ横に吉野が呆れた顔して立っていた。
私はガタタッとイスにぶつかった。
「わ!な、何!?」
「…何ボーッとしてんの?もう閉店時間なんだけど。片付け手伝えよ」
「あっ嘘、ごめん!」
ヤバッ!
この2週間のこと思い出してぼーっとしちゃってた。
…吉野の存在が私の中で大きくなっていく、この2週間―――
吉野の笑顔を見たり、意外な一面を見たり、お姫様抱っこされたり…いろいろありすぎた。
「俺外行ってくるから、岡部さんはレジやっといて」
え、レジ?
ヒラヒラと手を振って、外に向かおうとする吉野をひき止める。
「え、待って!今日は吉野くんがレジやってくれない?ほら、吉野くんの方が算数とか得意だろうし…たまには、変わってよ」
吉野と二人の時は、いつも私がレジの清算をさせられる。
何度も交代して、って言ってるのに、いつも却下される。
外の片付けは力いるから大変だけど、計算苦手だからレジの片付けはあまり好きじゃないんだよね。
それに、吉野は理系だし、計算得意そうだもん。
チラッと聞いたことあるけど、何か難しそうな学部の名前だった気がする…。
吉野が眉間に皺を寄せて、口を開く。
「…………却下。文句言わずにさっさとやれよ。いいな?」
「な…!?」
ビシッ、と指をさされて文句を言う暇もなかった。
吉野は外に出ていく。
……絶対に嫌がらせだ。