大嫌いなアイツ
 

―――プシューっとバスのドアが開く。


それが合図となって、目の前の闇から解放される。
吉野の顔がすごく近くにある。


…な、何?今の―――…


「…じゃあ、気を付けて。ほら、乗らないと」


吉野が私の身体をバスに向かって押し出す。
反射的に、バスのステップに足を掛け、バスに乗った。


無意識に振り向くと、そこには吉野の笑顔があった。


「おやすみ。」


プシューっとドアが閉まる。
動き出すバス。
吉野の姿が少しずつ遠ざかる。







…………何が起こったの?


吉野、私にキス、したよね?


髪の毛だけじゃなくて、唇にも。


――――――何でっ…!?

 
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