大嫌いなアイツ
「それって、俺に笑いかけて欲しい、ってずっと思ってたってこと?」
「……………………っ!」
ポンッ、と顔が熱くなる。
昨日のミキ先輩に言われた言葉が蘇る。
私はずっと無意識に吉野のことを見ていたこと。
そして、ずっと吉野に笑いかけてほしいって思ってたこと。
…そそそそういうこと、だったの?
意識しまくってた…って。
私のことも見てよ!って?
嫌いだと思ってた感情は、ただ自分の方を見てほしいっていう苛立ちだっただけ―――…。
私はずっと吉野のことを意識してたんだ。
一気に恥ずかしくなって、私は手で顔を隠した。
「ちっ、違う!嫌いだった!」
私は首をぶんぶんと横に振る。
素直になれない私が顔を出す。
だって、自分だけわかってなくて周りにバレてたとか、恥ずかしすぎる!
どうしても否定したくて、言葉を続けた。
「嫌いだ…んっ!」
言った瞬間、塞がれた唇。
く、苦しい…!
さっきとは全く違うキスに焦った。
吉野の胸をググッと押す。
…でも、無駄な抵抗だった。
「んん…っ」
離れようとすればするほど、吉野の腕に力が加わる。
それと同時に、力が抜けていく私の身体。
―――ヤバい…崩れそう…!
無理…!