大嫌いなアイツ
「初めて岡部さんに触れたのって、あの熱湯の日なんだよな。」
「あ…うん。そうかな…?」
ずっと、近くで接することなんて、ほぼなかったもんね。
それが今は、こんなに一番近くにいる。
「すっげぇドキドキしたの覚えてる」
「は…!?嘘でしょ?」
予想外の言葉に驚いた。
だって、吉野は飄々と私を抱き上げてたし。
ドキドキしてたのは、私だけだって…
そうじゃなかったの?
「ほんと。岡部さん、むにむにしてて柔らかいし、誘うような顔するし、いろいろ抑えるのに必死だった」
「誘うって…ひゃ…!ちょっと、吉野…!」
足首をペロッと舐められた。
ゾクッと身体に電気が走るような感覚だ。
身体の奥がじわじわと熱くなる。
ギャーッ!もう、勘弁してよ!
言葉でも、表情でも、行動でも、吉野は全てで私を惑わす。
一人だけ余裕な顔してズルい、と思ってしまう。
悔しくて吉野を睨んだ。
吉野がその視線に気付いたように、私のことを上目遣いで見つめた。
口元に笑みを浮かべる。
「…ほら。その顔だよ。誘ってんの?まだ、足りないって?」