大嫌いなアイツ
「そうだったんだ…」
「知らないの、梨夏だけだよ。たぶん。まさか、知られてないとは思ってもみなかったけどな」
「ご、ごめん…でも、吉野と話す機会あんまりなかったしさ~…」
「―――――いいよ。これからたくさん教えてあげるし。たくさん教えてもらうから」
「―――…んっ!」
『身体でもね。』と甘く囁かれたのと同時に、突然降ってきた唇。
一気にキスは深くなる。
私の口内で暴れまわる吉野の舌。
追い付けなくて、つい逃げてしまう私の舌。
…すぐに捕まえられてしまうけど。
二人の息づかいと唇が重なる音だけが、部屋中に響く。
それだけで、私は溶けてしまいそうだった。
吉野に、どんどん溺れていく―――…。
吉野のこと
あんなに、大嫌いだったのに。
今は、こんなに好き、なんて。
愛しい、なんて。
つい1ヶ月前の私には、こんな風になるなんて想像もできなかった。