大嫌いなアイツ
1
*1・後日談*
~本編の1ヶ月後の出来事。~
――――…
俺の目の前で拗ねているのは、1ヶ月前にやっと手に入れた俺の彼女だ。
彼女、梨夏が拗ねている理由。
それは、数時間前に遡る。
***
「―――――何で…!?」
・・
そこに俺の姿を認めたなり、梨夏は後ずさるようにして叫んだ。
ここはパスタ屋Smart Kitchenの厨房。
…予想通りの反応に、俺は心の中でニヤッと笑った。
「岡部~!良かったね♪ダーリン復帰して!」
「はっ!?ふ、復帰!?」
梨夏は目をパチクリしている。
その反面、梨夏のことを『岡部』と呼ぶミキさんは、ニヤニヤと俺と梨夏を交互に見比べる。
―――俺は1ヶ月前、パスタ屋のバイトを辞めた。
いや、正しく言うと、休暇をもらっただけ。
就職が決まって、夏休み中に1ヶ月間の研修がみっちり入っていたため、バイトを一旦辞めるという形になっていた。
研修のせいで、梨夏と会う時間も少なかったんだけど…。
俺がバイトを一旦辞める、ということになった時、梨夏はちょうど試験中でバイトに来ていない時期だった。
だから、梨夏だけ知らなかった。
バイト仲間は基本的に楽しい方向に持っていきたい奴らばかりで、梨夏に俺の復帰が伝わることはないとも思っていたし。
…俺も驚かせたくて、伝えることはしなかったんだ。