大嫌いなアイツ
 


店内はシンと静まり返っている。


「―――終わったか?」

「…まだ」


梨夏はちょっと拗ねたような声で答え、ぺら…ぺら…、とお札を数えている。


「手伝うよ。これ数えたらいい?」


俺の言葉に梨夏はお札を数える動きを止めて、俺のことを見上げた。
そして、コクンと頷く。


「………ありがと」

「――――いいえ。」


あーまずい。
梨夏お得意の、無意識誘い。
さっさと終わらせるに限る。


…こんな場所で押し倒すわけにはいかないし。





 
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