大嫌いなアイツ
――――…
「小林さん、冗談はやめてくださいよ~!」
「梨夏ちゃん、僕、本気なんだけどなぁ~」
「またまた!」
ロッカールームに向かっていた俺の耳に入ってきたのは、岡部と小林さんの声だ。
あはは!と廊下に響く、楽しそうな笑い声。
…ちょっとイラっとした。
小林さんは俺と同じ厨房の担当で、料理人を目指しているらしい。
会社を辞めて、バイトをしながら専門学校に通ってるとか…。
夢を追う姿は尊敬するに値する。
………………けど。
「ねぇ、梨夏ちゃん。本当に僕と付き合わない?…僕、本気で梨夏ちゃんのこと、好きなんだ」
「へ…!?いや、ああああの…っ」
急に真面目になった小林さんの声と突然の真面目な告白、そして、岡部が狼狽えている声が鮮明に聞こえた。