大嫌いなアイツ
小林がいなくなった後、岡部がゆっくりと口を開いた。
「ごめん、ね」
「…何が」
「いや…助けてくれたから。いい加減ウザかったし、助かった」
はっきりとそう言う岡部。
冷静な時は自分の気持ちを素直に出すタイプなんだとわかった。
ていうか。
…ウザかったって。
残念すぎるな、小林。
笑いそうになるけど、何となく抑えてしまう。
フゥ、と小さく息をついて、岡部を見た。
「…別に邪魔だっただけだし」
本当は、岡部のことが心配だったから。
…おまえを誰にも渡したくないから。
素直にそう言えない自分に腹が立つけど、これが限界だ。
そのまま俺は岡部から視線を反らして、ロッカールームに入った。
あのまま話してたら、俺の方が岡部を抱き締めていたかもしれない。
でも、岡部は俺のこと嫌ってる。
そんなことしたら、もっと嫌われる。
…そんなの、耐えられない。
たとえ嫌われていたとしても、少しでも会話ができる関係の方が、まだマシだ。