大嫌いなアイツ
 




梨夏とミキさんの会話を聞いた日から1週間。


…今のところ、梨夏にほとんど触れていない。




バイトを終え、事務所の電気を消す。
今日のラストは梨夏と俺の二人だ。


「よし。梨夏、帰ろ」

「うん…」

「明日、梨夏オフだよな?」

「あ、うん」

「いいなー。俺、ランチからフルで入ってるんだよな。…じゃあ、梨夏と次会うの、明後日か」

「…」


梨夏がいないバイトとか、だるすぎる。
早く明後日になってほしい。


…って、今からこんなんじゃ、俺が社会人になったらどうなるんだろう。
きっと、毎日なんて会えなくなるのに。


「……吉野…最近変じゃない?」

「…変?どこが?」

「いや………何か、よそよそしい気がするから…」

「――…そんなことないだろ?いつもと同じだって」

「そう、かな…?」


気付いてたのか。
俺が距離を取ってること。
でも、梨夏を思ってのことだし。
むしろ、梨夏はその方がいいと思ってるんじゃないのか…?


…梨夏の下げてしまった目線と表情に、身体が動きそうになる。


あー抱き締めたい。


梨夏に触らないって決めて1週間しか経ってないのに、すでにこの様だ。


 
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