大嫌いなアイツ

　


「…だって……れないんだも…っ」

「え？」

「やだよ…別れたくない…！だって、私はまだ吉野のこと…！」

「！」

「吉野が私を嫌いになっても」

「――ちょ、ちょっと待った！ストップ！」

「ぅ、～～…っ！」


梨夏は俺の胸に顔を埋め、イヤイヤと言うように、首を振る。


「梨夏。…何でそんなことになってるのかわかんないけど…俺が梨夏のこと嫌いになるとか、別れるとか、あり得ないから」

「…へ？」


梨夏がゆっくりと顔を上げる。


…久しぶりの近距離の梨夏だ。


「ていうか、逆…だと思ってたんだけど」

「…逆…？」

「…聞いたんだ。ミキさんと話してるところ。…俺に言えないことがあるって」

「…！」


梨夏に驚いた表情が浮かぶ。
心当たりがある、という表情だ。


「その時に梨夏、ベタベタすんの嫌い、って言ってたから。あー俺が触るの、本当は嫌だったんだなって。だから梨夏に触らないようにしよう、って思って」

「…っ」

「…梨夏に嫌われたくないし。嫌われるくらいなら触らない方が数倍マシだ、って。……でも」


もう、梨夏は俺の腕の中。


「もう限界。これ以上触らないとか無理」

「―――っ！」


俺は梨夏の腰に腕を回して引き寄せる。