大嫌いなアイツ
 


「…違う」

「え?」

「嫌いなわけ、ない…!」

「!」


梨夏の細い腕が俺の背中に回って、ぎゅっと絞められる。


「違うの!あれは…」

「…あれは?」

「だから、あれは…」

「うん」

「…今日…のために、聞きたくて」

「え?」


梨夏が少し離れて、顔を上げる。
…目が合う。


今日?
今日、何かあったっけ?


今日は…


2月…


14日…?


「…吉野にチョコレート好きか嫌いかって聞きたかったの。私チョコ好きじゃないし、でも、吉野が好きなら、バレンタインはチョコあげたいなって」

「…」

「でもこの時期に聞くのもあからさまだし、やっぱりその日に渡して喜ぶ顔見たかったし…聞くタイミング探ってて…結局聞けなかったけど」

「…」


…んだよ。それ。
俺のために悩んでたって?


…かわいすぎるだろ。


 
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