Heart ✰番外編✰
「なぁ、俺の言ったこと聞こえた??」
そう言って、朱希ではなくあたしに話しかけてきたんだ。
「「えっ…………。」」
あたしも朱希も両方ともビックリしていた。
朱希は自分に話しかけられているものだと思っていたから。
あたしは朱希に話しかけているものだと思ったから。
「俺、梓紗に用があるんだけど。」
初めて、男の子に『下の名前』を呼ばれた。
『梓紗』
その一言なのに何故か『特別な言葉』のように聞こえた。
でも、あたしはこの時の朱希の表情に気が付かなかった。
あたしを妬ましい眼差しで見ている朱希の表情に。