Heart ✰番外編✰
「あず…………さ??本当に夏起のことが分かんないの??」
「夏起??その人って誰??」
「夏起ってのは「俺のことだよ。」」
俺は琉斗の言葉に被せるように呟いた。
「あなたが夏起って人??」
「あぁ。俺が夏起だ。」
喋ってる言葉は淡々と出てくるのに、心の中は叫んでいた。
『俺を思い出してくれ。』
『忘れないでくれ』
俺は、どうして忘れられてしまったんだろうか。
そんな時、梓紗が衝撃の一言を彩海に言ったんだ。
「ねぇ、彩海。あたしのケータイのストラップ知ってる??」
「ストラップ??」
「そう、大事な人からもらったの。」
「大事な人??」
「あたしの恋人。」
「恋人??」
「うん、名前はね……………あれっ??名前は………。」
「どうしたの??」
「名前が…………分からないの………。」
「名前が…………分からない??」
「うん、何故か分からないの。」
そう言って梓紗は俺をチラッと見た。
……………えっ…………。
「なぁ、夏起。」
「どうした??」
「そう言えば、お前。さっき一生懸命に何か直してただろ。」
「……………あぁ、まぁな。」
「それって梓紗のストラップなんじゃねぇの??」
琉斗の鋭い視線が俺の心まで見透かすように射抜く。
そっとポケットの中でさっき直ったばかりのストラップに触れた。