Heart ✰番外編✰
俺は階段を駆け降りた。
まるで何かに追われているかのような感覚に陥った。
見えない鎖に繋がれた俺はどこにも行けない。
『梓紗』という鎖からは逃れられない。
そんな事を想いながら、俺はあの海に向かった。
俺は止まることなく、あの小屋に入った。
フワリと梓紗の香りがする。
俺はここで何度も梓紗を抱いた。
泣きそうに俺の名を呼ぶ梓紗を壊すかのように。
俺が起きる頃にはもう目を覚ましている梓紗。
俺が寒くないように、いつも抱き締めていてくれた。
勘違いしそうなその行為に何度も胸を締め付けられた。
それと同時に、俺は何とも言えない『幸福』に包まれていた。
さっきまでの出来事が頭の中をグルグルと支配する。
梓紗の香りが俺を酔わせていく。
深く溺れてしまった。
俺は、梓紗を忘れないといけないのか??
神様は俺に何がしたいんだ……………。
その日、俺は梓紗のストラップを見ることが出来なかった。