Heart ✰番外編✰











俺は階段を駆け降りた。


まるで何かに追われているかのような感覚に陥った。


見えない鎖に繋がれた俺はどこにも行けない。


『梓紗』という鎖からは逃れられない。


そんな事を想いながら、俺はあの海に向かった。


俺は止まることなく、あの小屋に入った。


フワリと梓紗の香りがする。


俺はここで何度も梓紗を抱いた。


泣きそうに俺の名を呼ぶ梓紗を壊すかのように。


俺が起きる頃にはもう目を覚ましている梓紗。


俺が寒くないように、いつも抱き締めていてくれた。


勘違いしそうなその行為に何度も胸を締め付けられた。


それと同時に、俺は何とも言えない『幸福』に包まれていた。


さっきまでの出来事が頭の中をグルグルと支配する。


梓紗の香りが俺を酔わせていく。


深く溺れてしまった。


俺は、梓紗を忘れないといけないのか??


神様は俺に何がしたいんだ……………。


その日、俺は梓紗のストラップを見ることが出来なかった。






< 50 / 70 >

この作品をシェア

pagetop