Heart ✰番外編✰





そのまま後ろを振り向かずに俺はドアを開けようとした。


「夏起くんっ。」


「俺はもう梓紗には関わらないから。こんなに汚いんだからな。」


「そんなことっ!!!!」


「俺は今まで、色んな女を抱いてきたんだ。梓紗みたいに綺麗じゃない。」


「………っ………。」


何かに耐えるような声が梓紗の口から漏れた。


「俺はもう梓紗と一緒には居られない。」


その瞬間、俺は一筋の涙を流した。


拭うことすら忘れた。


もう何もかもが終わったように感じたから。


たった一言。


     『一緒に居られない』


そう告げたはずなのに。


「汚い。」


後ろから聞こえてきた梓紗の声に身体がビクッと揺れる。


      完 全 に 時 が 止 ま っ た 。


思考が全て止まった。


呼吸することも忘れたかのように苦しくなる。


あぁ、俺はなんであんなに酷いことしか出来なかったんだろう。


助けてほしい。


底のない暗闇の深さにどこまで落ちていけばいいんだろう。


「ッククククク。」


俺は壊れたかのように笑った。


「そうだな、俺は汚いよ。」


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