Heart ✰番外編✰
でも、梓紗は俺の期待には答えようとはしてくれなかった。
「本当にっ………なんでも無いからっ。」
「どうしてなんだよっ!!!!」
俺はバルコニーに響くほど大きな声を出して梓紗に聞いていた。
俺の声が反響してキーンと高い音がこだまする。
「言えるわけ無いでしょっ!!!!だってあたしは夏起くんの事をっ!!!!」
初めて梓紗が俺に怒鳴った。
少しだけ嬉しいような気もした。
梓紗の『初めて』の顔をたくさん見れる。
でも、どうして俺はそんな顔しかさせてやれないのか。
そう考えるとチクリッと胸が痛む。
……………複雑だった。
「俺のことが…………なんだよ…………。」
嫌いなことは分かってる。
でも、頼ることは出来るだろ??
……………ムリだよな…………何度も抱かれた男に話すなんて………。
その証拠に梓紗は言葉に困っていた。
「…………分かってる。俺に言いたくないなんて。」
震えそうな声に必死に歯を食いしばる。
今ここで梓紗の前で泣いてしまったら梓紗は困る。
梓紗をもう困らせたくはない。
…………迷惑は…………もうかけたくないから。
俺はそっと離した…………しかし…………。