Heart ✰番外編✰
「そのままっ………離さないでっ…………。」
そう言って、今度は梓紗が俺を離そうとしない。
「っっ…………離せっ。」
「イヤ!!!!」
「離せよっ!!!!」
俺は無理やり梓紗を俺の身体から引き離した。
俺の瞳には梓紗の泣き顔が写る。
危うく伸ばし掛けた腕を必死にとどめる。
俺はもう梓紗を抱き締められない。
これ以上、梓紗に触れてしまえば俺のせいで梓紗が汚れてしまうから。
「っく………うぅ………っっ……。」
梓紗の泣き声がバルコニーに切なく響く。
今すぐにその涙を一つ残らずに拭き取ってやりたい。
だけど…………。
「俺はもうこの汚れた身体で梓紗には触れない。」
低く冷たい声が梓紗の声とリンクする。
「ねぇ、夏起くんっ。」
「…………。」
瞳に涙を溜めながら梓紗は俺を見た。
「夏起くんはっ………あたしのことを汚いと思う??」
「汚い??どういうこと??」
梓紗の口から漏れた『汚い』という言葉。
俺はその言葉に食い付いた。
「あたしはっ…………初めてあの小屋に行かなかった日に…………。」
その瞬間、梓紗は俺から瞳を逸らして…………。